『UNDERWATER LOVE-おんなの河童』初日舞台挨拶レポート

『おんなの河童』舞台挨拶


カルト的な人気を誇るいまおかしんじ監督が、ドイツのピンク映画ファンからの熱烈なラブコールを受けて制作した日独合作ピンクミュージカル『UNDERWATER LOVE-おんなの河童』。
撮影はウォン・カーウァイ監督作など世界を股にかけて活躍するクリストファー・ドイル! 劇中歌はドイツのデュオ・グループ、ステレオ・トータルが日本語で歌うエレクトロ・ナンバー。河童役には松江哲明監督のドキュメンタリー映画童貞。をプロデュース』(07)での「童貞2号」として強烈な印象を残した梅澤嘉朗。……と、とことん異種格闘技的な、でもとてもキュートで最後はじんわりハート・ウォーミングな作品です。
10月8日、ポレポレ東中野でついに公開となり、1日4回上映の全ての回で舞台挨拶が行われました。いまおか監督、正木佐和さん、梅澤嘉朗さん、成田愛さん、守屋文雄さん、吉岡睦雄さんが登壇した3回目の舞台挨拶の模様をレポートします。


左から、いまおかしんじ監督、梅澤嘉朗さん、正木佐和さん、成田愛さん、守屋文雄さん、吉岡睦雄さん

河童の着ぐるみ姿の梅澤さん、ワンピースを着た死神役の守屋さんが出てくるだけで、映画を観たばかりのお客さんの笑いを誘います。初日に足を運んでくれたお客さんに一言ずつ挨拶をしたあと、MCの直井卓俊さん(SPOTTED PRODUCTION)からの質問に答える登壇者たち。
この作品は、多忙なクリストファー・ドイルが本当に撮ってくれるのか?ということが実はギリギリまでの不安材料だったとのこと(!)。そのへんの事情から、まずヒロインの正木さんに質問がありました。

正木さん「監督がいまおかさんだということは最初に聞いていたんですけど、撮影監督が私が大学時代からファンだったクリストファー・ドイルさんということで『ほんまかいな』と思いまして、面接のときにも監督に『本当にクリスさん来るんですか?』って訊いたんです。そうしたら監督から『僕も現場に入らないと分からないんだよね』っていう答えが返ってきました(笑)」


正木佐和さん

いまおか監督「やってくれるっていう話は聞いていたんですけど、スケジュールがよく分からないと言うか、家がない人なので(笑)。いや、あるんでしょうけど世界のあっちで撮影、こっちで撮影ってしてるので。たまたま10日間ぐらい空いていたので来るってことになって、だからもう現場の3日ぐらい前ですもん、会ったの(笑)。何が何だか分からないうちに撮影が始まり、撮影が終わり……、という感じでしたね」


いまおかしんじ監督

次に、ミュージカルということで大変だったのでは、という質問が正木さんに。

正木さん「めちゃめちゃ大変でした。しかもフィルムだから絶対NGを出しちゃいけないと思ってがんばったんですけど、それ以上にいまおかさんとクリスさんという変なおじさんたちと一緒に……、ごめんなさい!お兄さんたちと一緒に(笑)仕事ができたことは貴重な体験でした。また、ドイツのケルンでのプレミアに立ち会うことができまして、ステレオ・トータルと一緒にライヴをして歌ってきたり、そういう体験もさせていただけて本当にありがたいと思います。ステレオ・トータルのフランソワは『死神が好き』って言ってました」

死神役の守屋さんはまんざらでもないご様子でした。次に役者が本業ではない梅澤さんに撮影で大変だったことは?との質問が。

梅澤さん「そうですね、せっかくクリストファー・ドイルが撮るのに俺なんかでいいのかと、いまおかさん頭がおかしいんじゃないかと思いました(笑)。踊りは大変でしたけど、現場の雰囲気もクリスさんも陽気で、楽しかったです」


梅澤嘉朗さん

いまおか監督「やっぱりミュージカルだし、初めての外人のカメラマンだし、大変だったんですよ。だけど大変で訳が分からなくなった中で、パッと梅澤くんが浮かんだんですよ(笑)。で、「出てくれる?」って電話をしたら、『バイトの都合が付けば出ます』と言われたんですが(苦笑)。まあ無事バイトの都合も付いて」

梅澤さん「始めたばっかりのバイトだったんですよ。休めるかどうか分からなくて」

いまおか監督「でも梅ちゃんが出るってなったらまた『イケる!』って気持ちが高まりましたね。これは面白くなるなって思って」

次にこの映画のセクシー担当、成田愛さんがクリストファー・ドイルからの演出についてお話してくれました。

成田さん「スカートをどんどんまくられていくんですよ。自分では普通に歩いているだけのつもりだったシーンを試写で観たら、『あ、ワカメちゃんみたいになっちゃってる!こんなに(スカート)上げられていたんだ!』って(笑)」


成田愛さん

クリスはピンク映画撮影監督としての腕も冴えているようでした。
共同脚本を手がけながら死神役で出演した守屋さん。

守屋さん「現場は本当に楽しいということだけしかなくて、申し訳ないぐらいでした。台本ができるまでに2年間もかかって、もう本当にご迷惑をかけて申し訳ないなって思いながら、撮影に入ると楽しい楽しいって。最後の奥地のシーンでクランク・アップだったんですが、印象的でしたね」


守屋文雄さん

と産みの苦しさを滲ませるとともに撮影をとても楽しんだ様子が伝わってきました。そんな守屋さん演じる死神がステレオ・トータルのフランソワに気に入られていたことにちょっとジェラシーを感じていたらしい吉岡睦夫さん。

吉岡さん「いまおかさんと正木さんはいろいろ映画祭に行かれている中で、ステレオ・トータルさんは死神がよかったよと言われてたということだったんですけど、誰か滝はじめがよかったと言っている方はいました?」

正木さん「えっと、『どうしてああいう髪型なのか』とか『どうしてカッコ悪い感じなの?』ってどこかの映画祭で質問を受けました」

いまおか監督「『お前ら何やってるんだ!』って来るとこで結構笑いが起きてた。なんでか分からないんだけど」

正木さん「やっぱりハイトーンボイスだと思います」

吉岡さん「分かりました……。ありがとうございます……」


吉岡睦雄さん

そして監督にこの映画が作られた経緯を語っていただきました。

いまおか監督「ピンク映画が好きなステファンというドイツ人がいて、映画を作ったことがない人なんですけど、自分もピンク映画を作りたいって言って、おカネを出すからピンク映画を撮らないかと。『俺はボリウッド映画が好きなんだ。ピンクでミュージカルを作ってくれ』って、簡単に言うんですよね(笑)。『エ〜ッ??』みたいのがあったけど、じゃあやりましょうかということになって、ああだこうだありましたけど完成できて。一時は本当にインできないかと思った時期もあったので、出来はともあれ、観てもらえたっていうことがいちばんいいなって思います。今日は嬉しいです」

また、『おんなの河童』公開を記念して、いまおか監督の旧作もポレポレ東中野で連日特集上映中です。上映作のうち『カエルのうた』という作品こそが、ステファンさんが観て気に入り、ミュージカルが撮れるんじゃないかと勘違い(?)した作品だそう。『おんなの河童』関連作としてこの機会にぜひどうぞ。

最後に、アメリカ・テキサス州でのオースティン・ファンタスティック映画祭にてベストアクトレス賞を受賞した正木さんに花束が贈られました。

正木さん「その映画祭に行かれたのは監督だけで、私は行かなかったのでまだ実感が湧いていなかったんですけど、今ここでお花をいただいて初めてジワーっときましたね。本当にありがとうございます!」


正木佐和さん

大感激の満面の笑顔がとても素敵でした。ご本人もとても優しく伸びやかな方なのだろうなということが舞台挨拶から伝わってきたのですが、そんな屈託のなさがヒロイン明日香役にぴったりで、授賞にも大いに納得です。
ピンク映画ファンはもちろん、少女の心を忘れない女性やほっこりしたいと思う全ての人に観てもらいたい作品。この後もトークショーなどイベントの機会が数多くあります。奇才スタッフ・キャストのお話に触れながら、いろいろな切り口からぜひ楽しんでください。

★and more……★

・現在予定されているトークショーのスケジュールは以下のとおりです。
ポレポレ東中野 20:30〜上映後

10.9(日)漫画家とプロインタビュアーと「おんなの河童」
いまおかしんじ監督×古泉智浩(漫画家)×佐藤香穂(漫画家/『おんなの河童』イラスト提供)×吉田豪(プロインタビュアー)

10.12(水)「おんなの河童」元ネタ暴露?水木しげるリスペクトナイト
いまおかしんじ監督×鈴木卓爾(映画監督/『ゲゲゲの女房』)×守屋文雄(『おんなの河童』脚本・出演)

10.14(金)童貞2号から踊る河童へ〜国際派俳優・梅澤嘉朗を囲んで
いまおかしんじ監督×梅澤嘉朗(『おんなの河童』出演)×松江哲明(ドキュメンタリー監督/『童貞。をプロデュース』etc.)

10.19(水)いまおかVS次世代監督トーク VOL.1
いまおかしんじ監督×今泉力哉(映画監督/『終わってる』)×吉田浩太(映画監督/『ソーローなんてくだらない』)×長谷部大輔(映画監督/『絵のない夢』)

10.20(木)死神脚本家・守屋文雄を囲んで
いまおかしんじ監督×守屋文雄(『おんなの河童』脚本・出演)×沖田修一(映画監督/『キツツキと雨』)×城定秀夫(映画監督/『タナトス』)

10.28(金)いまおかVS次世代監督トーク VOL.2
いまおかしんじ監督×内藤瑛亮(映画監督/『先生を流産させる会』)×加藤行宏(映画監督/『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』)×天野千尋(映画監督/『チョッキン堪忍袋』)

ユーロスペース 21:10〜上映後

10.22(土)検証!いまおか=山下ライン
いまおかしんじ監督×山下敦弘(映画監督/『マイ・バック・ページ』)×森直人(映画評論家)

10.26(水)新生アイドル研究会 VS 「おんなの河童」
いまおかしんじ監督×Bis(プー・ルイヒラノノゾミテラシマユフナカヤマユキコ)×南波一海(音楽ライター)

10.31(月)河童女子流〜「おんなの河童」女性人気を探る。
いまおかしんじ監督××正木佐和(『おんなの河童』主演)×森下くるみ(文筆家)

『UNDERWATER LOVE-おんなの河童』 2011年/日本/カラー/86分/35mm
監督・脚本:いまおかしんじ
脚本:守屋文雄
撮影:クリストファー・ドイル
音楽:ステレオ・トータル
出演:正木佐和 梅澤嘉朗 成田愛 吉岡睦雄 守屋文雄 佐藤宏
(C)国営株式会社/Rapid Eye Movies/インターフィルム
公式サイト
10月8日(土)ポレポレ東中野|10月22日(土)ユーロスペース|10月下旬・ドイツ6都市ほか全国順次ロードショー!