Review<レビュー>

『あいときぼうのまち』原発の問題に立ち向かう大いなる家族の物語

強靭なドラマの世界に身を任せる快感! 『あいときぼうのまち』を震災と原発事故を描く社会派映画とくくり、それで足を運ぶのを躊躇している人は多いかもしれない。それ以前に、この作品がフィクション映画の常識に反して「東京電力」の企業名をそのまま出し…

『1+1=1 1(イチタスイチハイチ イチ)』

『ストロベリーショートケイクス』や『スイートリトルライズ』で端正な恋愛群像劇を綴ってきた矢崎仁司監督。その作品はとても独特な世界観を持っていた。不安や孤独や情念というドロドロした感情を、至近距離から残酷なほど生々しく映し出すのだけど、視線…

『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 堕ちた末の魂の咆哮

北関東の寂れた町を舞台に、「ここではないどこか」を夢見ながらも飛び出しそこねた若者があがく姿を描いた『SR サイタマノラッパー』。長回しのカメラが挫折した青年/女子を追い詰め、残酷さにいたたまれない思いでいると、彼らがカメラを見返しスパークす…

『エッセンシャル・キリング』イエジー・スコリモフスキ

長い沈黙を破って発表した『アンナと過ごした4日間』(08)で熱狂的な再評価を受けたイエジー・スコリモフスキ監督の新作が、中東を舞台にしたヴィンセント・ギャロ主演のアクションものだと聞いたときには大いに驚いた。そんな大作を撮ってしまうのか、と。…

陽光溢れる古都で、幻影を追う男の妄執を描く〜『シルビアのいる街で』

今、恋は男がするもの……、という時代なのだろうか。『アンナと過ごした4日間』、そして『(500)日のサマー』と、不器用に、ひとりよがりに、男が女を想う映画が立て続けに話題を呼んできた。それらと同じように女の名前をタイトルに刻み、想いを凝縮させた3日…

『nude』―普通の女の子がAV女優の道に踏み込んだ、不安と葛藤を描く青春映画

『nude』は、普通の女の子“ひろみ”が、AV女優“みひろ”へと歩んでいった道のりを描いたみひろの私小説が映画化されたもの。女性が共感できる映画なのか、AVにはまるで免疫がないので少し緊張しながら試写会へ。 (c) 2010「nude」製作委員会 赤とピンクを一切…

瑞々しい映像と確かな演技で魅せる大人の恋愛映画〜『結び目』

それぞれの結婚生活を淡々と送る男女が町のクリーニング店で出会う。かつて女子中学生と教師という禁断の間柄で激しい恋に落ち、あっけなく引き裂かれていたふたりの、14年ぶりの再会だった。封じ込めていたはずの彼らの熱情は、この偶然にとめどなくほとば…

ベトナム戦争勃発から50年を迎える今年、2本のドキュメンタリー映画が日本初公開される。そのうちの1本、『ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実』(74)を観た。

製作期間は1972年から2年間の戦争末期。75年にアカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、反戦運動を後押しして終結を早めさせたと言われている。非常に話題になっていながらも日本では劇場公開されず、テレビの深夜枠で放映された。そんな特殊…