『nude』―普通の女の子がAV女優の道に踏み込んだ、不安と葛藤を描く青春映画

 『nude』は、普通の女の子“ひろみ”が、AV女優“みひろ”へと歩んでいった道のりを描いたみひろの私小説が映画化されたもの。女性が共感できる映画なのか、AVにはまるで免疫がないので少し緊張しながら試写会へ。
(c) 2010「nude」製作委員会
 赤とピンクを一切排除したという演出の為か、白が基調の映像。主人公ひろみ/みひろを演じる渡辺奈緒子さんの凛々しい面立ちも手伝って、映画全篇を通して清々しい清潔さが印象的。良い意味で、普通の“青春”映画。1人の女の子が夢を追いかける途中の、友人や恋人、そして自分自身との葛藤が真っ直ぐに描かれた作品だ。


 「渋谷でスカウトされたりしてみたいんさ。芸能人になりたい」
 高校を卒業して新潟から上京することを決めたひろみが親友さやかに言った。ぼんやりとした夢だな、と思った。彼女の夢は言葉にするといつになってもどこかぼんやりとしたままなのだけれど、具体的な計画より何より、一番大切なのはその夢を信じて進むという決心なのかもしれない。


 「初めから女優とかタレントになるのは無理だよね?」
 そんな言葉でヌードモデルの仕事を始めてしまったひろみだが、故郷の親友さやかも一緒に暮らす恋人も勿論反対する。「軽蔑する」と言われても、「嫌々やってるわけじゃない」「写真を撮られることが好き」と自分の道を信じるひろみ。そして、AVはお金の為にやることと思っていたのに、とうとうAV出演を決める。


 「このままだったら道はどこにもつながってない」
 だからと言って、AVをやればどこにつながるのか。そんな保障はどこにもない。それでも、どこにもつながっていないようにも見える道を信じる強さはどこから生まれるんだろう。
 “利用されてるだけ”“後で後悔する”“辞めた方がいい”――私が親友でも同じことを言うだろうし、多分そういう助言の方が正しく見えることも、実際に正しいことも多いだろう。それを振りきれるのは、すごい。周りの人の理解を得られなくても、自分を信じる強さ。信じ続けることの難しさと大切さを、感じた映画だった。

 最後に、ひろみが芯が通っていると思うのは、今自分が向かっていること、仕事へのプロ意識。周りの人の理解を得られなくても、「嫌々やってるわけじゃない」と誇りを持ち続け、AVの台本もきちんと予習・練習をする。それでも、好きでもない人とえっちをすることの辛さ、信じられなさは、普通の女の子と同じ。辛くてもこつこつと前に進む彼女の姿には、誰もが共感し、前に進む力をもらえるのではないかと思う。同世代(筆者はみひろさんの1歳年下でした。汗)の女性に是非観てもらいたい作品だ。


9/18よりシネマート新宿、10月シネマート心斎橋ほか全国ロードショー
公式サイト:http://www.alcine-terran.com/nude/

監督:小沼雄一 原作:みひろ『nude』(講談社刊) 
出演:渡辺奈緒子 佐津川愛美 永山たかし みひろ 山本浩司 光石研