3月12日、池袋シネマ・ロサにて『ランニング・オン・エンプティ』の楽日舞台挨拶が行われました。

hito_revi2010-03-17


登壇者は、小林且弥さん、みひろさん、大西信満さん、杉山彦々さん、そして佐向大監督の5名。司会をプロデューサーの大野敦子さんが務めて、気心の知れたメンバーでの自然体トークが繰り広げられました。

まずはひとりひとりへのちょっとあらたまった質問から。小林さんは最初に脚本を読んだときの印象を訊かれて、「僕ちょっと記憶にないんですけど、監督に初対面でお願いしますって言われたときに、ちょっとこのホン直したほうがいいんじゃないかって生意気なこと言ったみたいで(笑)。いや、僕言ってないっていつもそこで論争になるんですけど……。ニュアンスの出し方ですごく面白い作品になるんじゃないかなあって思った記憶はあります」と振り返っていました。はい、人レビがインタビューをしたときもこの論争が起こったのです。真相はどうなのでしょう。でも実はこの日、小林さんのマイペースさと仕切り癖(?)を目の当たりにすることになるのですが……。

若松孝二監督の『キャタピラー』で主演を務め、ベルリン国際映画祭に参加していたため、初日舞台挨拶では登壇のなかった大西さん。今回の祐一という難しい役どころについての質問に、「確信犯的に相手役と噛まない、あえて上手く回らない演技を心がけていました。台本を読んだ段階でそういうふうに演じようとしたのではなく、監督と話しているうちにどうやらそれを求めているのかなと掴めてきて。それは演じる上で結構勇気の要ることなんですけど、監督を信じてみました」と。緊張感みなぎる祐一出演シーンですが、こんな覚悟をしながら役に臨んでいたんだ、と納得させられました。

ヒデジと祐一という対照的なふたりの間を行き来する、妖精のような(笑)田辺役は、監督が初めから杉山さんに演じてもらうことを希望していたそう。それについて杉山さんは「少しの出番で大きな印象を残せるというおいしい役でしたね。そして見ていただいたら分かると思うんですが、監督は僕のことをこういうふうに見ているんだなってことが分かる映画です」と飄々と語って笑わせてくれました。

みひろさんは、体を張った撮影秘話を披露してくれました。「この映画は走るシーンが多いんですが、私あるシーンで大コケしちゃいまして、膝こぞうを擦りむいたんです。ちょうど1年前の撮影なのに、まだ跡が残ってるんですよ!(そんなことは全然知らなかったという監督に)こっそりばんそうこうを貼って、何事もなかったかのように演技を続けました」。このみひろさんの疾走シーンはとても美しくて印象的なのですが、こんな苦労があったんですね。役者魂に感心しました。

ここでなぜか小林さんが「1回まとめましょうよ、僕まとめますよ」と突然仕切り始め、佐向監督に「どうですか、あの、1年経って」と話を振りました。びっくりする佐向監督。そして一同から「まとまってねーよ」とツッコミが……。しかしここからの噛み合わないトークは、台本があるんじゃないかと思うぐらいに絶妙にズレながら繋がっていって、『ランニング・オン・エンプティ』の微妙で生々しい会話シーンが再現されているようでした。

佐向「ちょうど1年前に撮影してて……、1年っていうのは早いなあとみんなも思いません?」
杉山「監督と僕は花粉症で大変でしたよね」
小林「僕も今年ぐらいから花粉症来てて。気付きたくないですよね。どうなんですか花粉症のごまかし方とか」
みひろ「ヨーグルト食べるといいですよ!私ヨーグルト食べてます!」
小林「花粉症なんですか?」
みひろ「全然違います!」
佐向「……大西さんは花粉症関係なさそうですよね」
大西「全然関係ないですね」
小林「何か病気とかありますか」
大西「あ、甘いものがダメですね」
小林「それは別に好みなんで。病気じゃないです」

活字にすると半分も伝わらないのが残念。失笑で苦しくなりそうでした……。

舞台挨拶の最後に大西さんがまとめました。「今20分ぐらいトークショーやっていて、全然噛まないじゃないですか、みんなの会話。まさにこういう感じの映画だと思います。相容れない他人同士の、なんでそうなのかなっていう違和感を感じてもらえたらおそらく監督の狙い通りではないかと思います」と……。
みんながてんでバラバラの方向に走っていって、でもそれぞれが一生懸命なので、噛み合わないなりに影響し合って何かを引き起こしてしまう。ユルく笑わせつつも、他人同士の関係から生まれる強大なパワーというものを考えさせてくれる映画であり、役者さんたちだったなと思います。

東京での公開は終わってしまいましたが、これからDVD化が予定されているとのことですので、見逃している方は必見です。
また、3月19日(金)まで大阪シネ・ヌーヴォXにて上映中、3月27日(土)から4月2日(金)まで名古屋シネマテークにて、4月3日(土)には高崎映画祭「若手監督たちの現在」にて上映されます。

映画『ランニング・オン・エンプティ』
2月20日(土)より、池袋シネマ・ロサにてレイトショー!他、全国順次公開
(C)2009アムモ
公式サイト http://roe-movie.com/