6月26日、渋谷シアター・イメージフォーラムにて『結び目』の初日舞台挨拶が行われ、小沼雄一監督と、赤澤ムックさん、川本淳市さん、広澤草さん、三浦誠己さんが登壇しました。

初日舞台あいさつ

 同作は、『童貞放浪記』の小沼雄一監督作品。
 生徒と教師という立場でありながら、禁断の関係を結んでしまった絢子と啓介が、14年の別々の道を経て、ある日運命の再会をはたしてしまうという、大人のラブストーリー。

 映画とは変わって爽やかなベリーショートで現れた主演・絢子役の赤澤ムックさん。
 劇団「黒色綺譚カナリア派」主宰、演出家・執筆業・女優とマルチな活躍を見せる赤澤ムックさんに、映画初主演で感じた舞台との違いは、という質問から始まり、インタビュー形式で進んで行きました。


 (左から赤澤ムックさん、川本淳市さん)

赤澤さん「舞台は、目の前のお客様を相手にする作業なんですけれども、映画は目の前で固唾を飲んでいるスタッフを遮断する作業だなと思いました。ロケーションが、川のシーンは川で森のシーンは森でと、役者として贅沢だなと思いましたが、それ以上に絢子という肉体をリアルにしなくてはいけないんだな、と感じさせられました」

―更に具体的に何か映画の現場ということで、苦労されたことや気をつけたことなどはありましたか?

赤澤さん「欲を出さないこと、ですね。目の前の監督やカメラに対して欲を出すと、フィルムは残酷なので、役者のエゴしか映さないものだと感じさせられました。とても怖い現場でした(笑)。でもその分、やりがいはあったと思います」

 次に、妻がいながらも、かつての教え子・絢子への想いに狂う元教師・啓介役を繊細に演じられた川本淳市さん。

―今回の役を演じる上で、どういう点に気を使われていましたか?

川本さん「まずは太らないこと。監督にあまり体格よくならないで下さい、と最初に言われたので。あとは、役を嫌いにならないように努力をしました。周りの方々に対してものすごい失礼な役だったので、せめて自分だけはこの役を愛してやろう、というところを気を付けました」

 そんな啓介の妻・茜役は、健気な笑顔の下で、必死で愛を守ろうとする強さを秘めた難しい役どころ。茜役を演じた広澤草さんは、茜という女性への思いを温かく語ります。


 (左から広澤草さん、三浦誠己さん)

―どのように茜という役を感じられていたでしょうか?

広澤さん「茜という役も、ちょっとイラっとするというか、なんだこの女、という部分が結構あるんじゃないかなと思ってまして、私も茜ちゃんをすごく愛してあげたいなと思ったし、すごく愛おしい役になったので、イラっとする部分が多々あるかとは思いますが、温かい目で観てあげてほしいな、と思います」

 絢子の夫・雁太郎役の三浦誠己さんは、12日公開した北野武監督作『アウトレイジ』をはじめ、今年も出演作が多数公開予定。

―『結び目』は他の作品と比べていかがでしたか?

三浦さん「脚本が、すごい繊細な脚本で大好きで。監督も心地よくやらせてくれる環境だったので、思い出に残っている現場です」

 俳優陣4名の作品や役への思いを横で聞いていた小沼雄一監督。本作では、4人の激しい感情や葛藤を繊細にかつ美しく描き出していますが、素晴らしい俳優陣をキャスティングできたことへの喜びを語ります。

―個性的ではまり役な4人の役者さんをどのように選ばれたのでしょうか?

小沼監督「普通の商業映画と違って、今回は主演からメインのキャスト全て、必ず複数の候補を挙げて、この映画の登場人物に合った俳優を選ぼうと、純粋に決めさせていただきました。それは今の映画界では非常に珍しいことで、今回のこの映画のキャスティングには、本当に150%満足しています」

 また、本作は、ニコンデジタル一眼レフカメラD90の動画撮影機能「Dムービー」で全編撮影されており、その稀有な映像美も見逃せない作品。

デジタル一眼レフカメラの動画機能で全編撮影されたことで、難しかったことや特徴などはありましたか?

小沼監督ニコンD90という一眼レフカメラについていた動画機能で映画を撮影したんですけれど、普通のビデオカメラよりも撮像素子といいますか、光を受ける面の面積が非常に大きいんですね。そうすると光も明るく、色彩がすごく豊かという印象がありまして、それで撮影にチャレンジしてみたのですが。ただ、あくまで一眼レフのカメラなので、ビデオ撮影にはいろいろ不都合もありました。例えば、撮影中にカメラに熱がこもってオーバーヒートの表示が出てくると、撮影できなくなってしまって。『カメラ冷やします』と言って、現場で待っていた時が何度かありました。そういう不都合は少々あったんですけど、上がりは非常に満足しています。普通のビデオカメラでは得られない色と光を今回撮ることができたなと思っています」

 最後に、この映画の見所を、一人一人が述べていきます。

赤澤さん「この映画は、“中学生と教師の恋”や“不倫”というような過激な煽り文句で話題になっているようですが、観ていただきたいのはそういうことではなくて、自分の今までを振り返るというのは、誰でも辛い作業だな、と思ってます。でも、それに向かい合わないと先に行けない場合もあるんだな、とこの映画を作りながら強く感じました。皆さんに何かそういう力になれば、と思っています」

川本さん「非常に静かな映画です。台詞もあまりないですし。読んでいくような形で映画を観ていただければと思います」

広澤さん「川本さんがおっしゃった“読むような映画”というのがしっくりくるなと思います。すごく綺麗な、本を読むかのような作品だな、と私も思いますので、派手さはないと思いますが、しんみり重みを感じていただければと思います。何度観ても楽しめる映画だと思いますので、いろんな方に観ていただいて、広めていただければなと思います」

三浦さん「皆さんがこの作品を観て何かを感じ取ってくれて、そしてまた映画館に足を運んで欲しいな、と思います。本日はありがとうございました」

小沼監督「予算もなくて大変な現場の中、スタッフとキャストが、人数は少なかったんですけれど、非常に精鋭が集まったと思っています。自分の作品の中でも、凝縮された濃密な時間と空間を得られた作品だったと思っています。特に、この4人が映画の中でどう生きているか、ということをスクリーンの中で確認していただければ嬉しいです。宜しくお願いします」

 役者陣、そして監督の、同作への真摯な思いが伝わって来る初日舞台挨拶でした!


 (左から小沼雄一監督、広澤草さん、赤澤ムックさん、川本淳市さん、三浦誠己さん)

映画『結び目』
6月26日(土)より、シアター・イメージフォーラムにてモーニング&イブニングショー!

製作・配給:アムモ   
公式サイト: http://musubime.amumo.jp/


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